ジンジャーをもっと深く知る 第1回 「夏こそジンジャー」
暑い季節に温める植物を取り入れる理由
ジンジャーと聞いて、どんな季節を思い浮かべますか。
寒い冬に飲むジンジャーティー、冷えた手足を温める生姜湯。
そんなイメージを持つ人が多いかもしれません。
けれども、私たちのからだが冷えるのは冬だけではありません。
外は猛暑、室内は冷房。
そこへ冷たい飲み物や食べ物が重なる現代の夏は、
からだの表面では暑さを感じながら、
胃腸や手足には冷えを感じるという、
少し複雑な季節です。
そんな夏のセルフケアに、身近なジンジャーを役立ててみませんか。
夏の不調は、暑さだけが原因ではない
高温多湿の日本の夏は、体温を一定に保つだけでもからだに負担がかかります。
暑い屋外と冷房の効いた室内を行き来すると、
そのたびに血管の収縮や発汗を調節しなければなりません。
さらに、暑いからと冷たいものばかり摂っていると、
胃腸に負担がかかり、食欲が落ちることもあります。
夏になると、
食欲が出ない
胃が重い
冷房の部屋にいると手足が冷える
なんとなくだるい
夕方になると疲れが残る
と感じる人がいるのは、
このような複数の要因が重なっているからでしょう。
漢方では、夏の不調を単に「暑さ」の問題とは考えません。
暑さに加えて、
・湿気
・発汗による消耗
・冷たい飲食物
・冷房による冷え
なども含めて、その人の状態を見ていきます。
夏の養生は、ただ冷やせばよいわけでも、むやみに温めればよいわけでもないのです。
ジンジャーが夏の食卓に合う理由
ジンジャーは、ショウガ科の植物 Zingiber officinale の根茎です。
料理では香辛料として、漢方やハーブの世界では古くから薬用植物として利用されてきました。
独特の辛味と香りには、食欲を刺激し、食事を取りやすくしてくれる魅力があります。
胃のむかつきや吐き気を和らげる可能性についても研究されており、
欧州医薬品庁では、ジンジャーの根茎を胃腸領域に用いられるハーブとして評価しています。
夏のジンジャーのよさは、強く「温める」ことだけではありません。
冷たい麺や豆腐、夏野菜などに薬味として少量添えると、
香りと辛味が加わり、食欲の落ちたときにも箸が進みやすくなります。
冷たい料理一辺倒になりがちな食卓に、ほどよい刺激を加える役割もあります。
東南アジアやインドなど暑い地域の料理にジンジャーがよく使われることを考えると、
ジンジャーは決して冬だけの植物ではないことがわかります。
夏は「温度」より、からだの状態で使い分ける
夏のジンジャーは、その日の状態に合わせて使うのがポイントです。
暑さで食欲がないとき
すりおろした生姜を、冷ややっこ、そうめん、蒸し鶏、きゅうりの和え物などに少量添えます。
生のジンジャーには、みずみずしい香りとシャープな辛味があり、食事のアクセントになります。
一度にたくさん摂る必要はありません。
「少し香りを感じる程度」から試してみましょう。
冷房や冷たい飲食物で胃が疲れているとき
温かいスープやみそ汁、紅茶などにジンジャーを加えます。
朝から冷たい飲み物を続けていた日や、
冷房の中で長時間過ごした日は、
夕食に温かい汁物を一品加えるだけでもほっとするものです。
乾燥ジンジャーは生より辛味が強く感じられることがあるため、少量から使います。
暑さと冷えの両方を感じるとき
ジンジャーにペパーミントやレモングラスを合わせる方法があります。
ペパーミントの清涼感やレモングラスの爽やかな香りに、
ジンジャーのスパイシーさを少し加えると、
夏らしいハーブティーになります。
温かいままでも、
粗熱を取って常温に近い温度で飲んでもよいでしょう。
冷えが気になるからといって、
真夏に熱い飲み物を無理に飲む必要はありません。
大切なのは、温度の決まりを守ることではなく、
自分のからだが心地よいと感じる形を選ぶことです。
夏の簡単ジンジャーハーブティー
カップ1杯分の目安です。
薄切りの生姜 1~2枚
ペパーミントまたはレモングラス 小さじ1程度
熱湯 約200mL
材料に熱湯を注ぎ、ふたをして5分ほど蒸らします。
辛味が強ければ生姜を減らし、
酸味が欲しいときはレモンを少量加えます。
汗を多くかいたときは、
このお茶だけで水分や電解質を補おうとせず、
水や食事も含めて十分に補給してください。
植物の力は「多いほどよい」ではない
料理に使う程度のジンジャーは
多くの人にとって取り入れやすいものですが、
濃縮サプリメントやエキスは、
食品として少量使う場合とは分けて考える必要があります。
摂りすぎると、
胸やけ、胃の不快感、下痢、口や喉への刺激が起こることがあります。
妊娠中の人、
胆石など胆のうの病気がある人、
医薬品を服用している人が継続的にサプリメントを使用する場合は、
医師や薬剤師に相談してください。
また、ジンジャーは熱中症の予防や治療に代わるものではありません。
強いだるさ、頭痛、吐き気、意識の変化などがある場合は、
涼しい場所への移動や
適切な水分・電解質補給を行い、
必要に応じて医療機関を受診しましょう。
夏のからだに、小さな調整を
夏は、暑いか寒いかの二択ではありません。
外の暑さ、室内の冷え、湿気、食欲、睡眠、疲労。
その日の環境やからだの状態によって、
必要なセルフケアは変わります。
ジンジャーも、「冷えに効くから摂る」と決めつけるのではなく、
今日は薬味として爽やかに使うのか、
温かい飲み物に少し加えるのか、
自分の感覚を確かめながら選んでみてください。
植物を暮らしに取り入れることは、
効能を覚えることだけではありません。
今の自分は暑いのか、
冷えているのか。
食べたいのか、
胃を休ませたいのか。
そんな小さな変化に気づくことも、
夏を健やかに過ごすための大切な養生です。
次回は、
生、加熱、乾燥によって
ジンジャーの成分や使い方がどのように変わるのかを、
漢方とメディカルハーブの両方からご紹介します。
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