Mindful Eating

ビタミンP、足りていますか?――食事は『栄養』だけでできていない


ビタミンPとは?


ビタミンC、ビタミンD、ビタミンB群。
健康のために必要なビタミンはいろいろありますが、いま注目したいのは「ビタミンP」です。
とはいえ、これは正式なビタミンの名称ではありません。ここでいうPは、

Pleasure(喜び・楽しみ)のP。


食べる喜びを、私たちに欠かせない栄養になぞらえた言葉です。


私たちはつい、食事を栄養素の足し算で考えてしまいます。
たんぱく質は足りているか。

野菜は何グラム食べたか。

糖質や脂質を摂りすぎていないか。


もちろん、どれも健康を考えるうえで大切です。


しかし、栄養バランスの整った食事をしていても、

テレビやスマートフォンを見たまま、

味わう間もなく食べ終わってしまったらどうでしょう。


体には栄養が届いていても、

心には「食べた」「おいしかった」という実感が、

あまり残っていないかもしれません。


「ビタミンP」には、もう一つの意味があった


実は「ビタミンP」という呼び名は、

まったく別の意味で使われた歴史もあります。


かつて、柑橘類などに含まれる

ヘスペリジンやルチンといったフラボノイドの一部が

「ビタミンP」と呼ばれていました。


しかし、単一の必須栄養素ではないことが分かり、

現在は正式なビタミンには分類されていません。


つまり、

昔のビタミンPも、

今回のPleasureとしてのビタミンPも、

正式なビタミン名ではありません。


それでも「食べる喜びは、健康的な食生活に欠かせない」

という発想には、

単なる言葉遊びでは終わらない面白さがあります。


ながら食べで失うのは、食べた量の記憶かもしれない

テレビやスマートフォンを見ながら食べる「ながら食べ」は、

食事への注意を弱めます。


2026年に発表された、

成人を対象とする50研究の系統的レビューとメタ解析では、

気を散らしながら食べることが食事量に与える影響が検討されました。


その結果、

ながら食べが「その場の食事量」を必ず増やすとは言い切れませんでした。


一方で、テレビのような受け身の刺激を見ながら食べた場合には

摂取量が増える傾向があり、

さらに、気を散らして食べた人は

次の食事や間食で食べる量が増えることが示されました。


なぜ、あとから食べる量が増えるのでしょうか。


考えられている理由の一つが、

食事の記憶です。


画面に注意を奪われていると、

「何を、どのくらい食べたか」

という記憶が残りにくくなります。


胃には食べ物が入っていても、

脳には食べた経験が十分に刻まれず、

あとから満足感を得にくくなる可能性があります。


問題は、その場で食べすぎることだけではありません。


食べたのに、食べた気がしない。


そんな状態をつくってしまうことに、

ながら食べの落とし穴がありそうです。


 楽しんで食べると、むしろ少ない量でも満足できる?


「食べる喜びを大切にしましょう」と言うと、

好きなものを好きなだけ食べることだと思われるかもしれません。


しかし、食事を楽しむことと、

無意識に食べ続けることは同じではありません。


健康な大学生319人を対象に行われた3つの実験では、

短いマインドフルネスの説明を受けて

チョコレートやレーズンなどを味わった人は、

気を散らしながら食べた人よりも、

食べる楽しさを強く感じました。


さらに一つの実験では、

マインドフルに食べた人は楽しさを強く感じながら、

高カロリー食品の摂取量は少なくなりました。


これは「楽しむほどたくさん食べる」

とは限らないことを示しています。


香り、温度、甘味、苦味、舌触りなどに注意を向けることで、

一口から受け取る情報が増え、

少ない量でも満足しやすくなるのかもしれません。


ただし、この研究は若い大学生を対象にした短時間の実験です。

誰にでも同じ効果があり、

長期的な減量につながるとまでは言えません。


それでも、食事への注意が

「楽しさ」と「食べる量」

の両方に関係する可能性を示した点は興味深いところです。


マインドフルイーティングとは、食事を修行にすることではない


マインドフルイーティングとは、

今この瞬間の食事に、

評価や罪悪感を持ち込まず注意を向ける食べ方です。


たとえば、次のような感覚を観察します。

- 食べる前、どのくらい空腹なのか

- どんな香りがするのか

- 口に入れたとき、どんな温度や食感があるのか

- 食べ進めるにつれて、空腹や満足感がどう変わるのか

- 本当にもっと食べたいのか、それとも習慣で手を伸ばしているのか


大切なのは、「きちんと集中して食べなければ」

と自分を縛ることではありません。


家族や友人と会話を楽しみながら食べることも、

食事の大切なPleasureです。


文化や思い出、

人とのつながりまで含めて、

食事は私たちを養っています。

画面を見たことに罪悪感を持つ必要もありません。


ただ、ときどき画面を置いて、

食事そのものに戻ってくる。それだけで十分です。


まずは「最初の三口」から


すべての食事を、

静かに時間をかけて食べるのは現実的ではありません。


そこで試してみたいのが、

最初の三口だけ、画面を見ずに食べることです。


一口目は香りに注意する。
二口目は温度と食感を感じる。
三口目は「おいしい」の中身を探してみる。


甘い、香ばしい、ほっとする、懐かしい。


そうして食事の経験を言葉にすると、

いつもの一皿から受け取れるものが少し増えます。


健康的な食事とは、

正しい食品を選ぶことだけではありません。


食べたことに気づき、

おいしさを受け取り、

心にも「ごちそうさま」が届くこと。

その小さな満足が、

次の食行動を穏やかにしてくれる可能性があります。


今日の食卓では、栄養素だけでなく、PleasureのPも意識してみませんか。


参考文献・出典


- Healthline. “Get Your Vitamin P: Why Pleasure Matters When It Comes to What You Eat.” Updated January 28, 2026. https://www.healthline.com/nutrition/get-your-vitamin-p-why-pleasure-matters-when-it-comes-to-what-you-eat
- Gough T, et al. “Eating whilst distracted: A systematic review and meta-analysis of the effect of distraction on concurrent and later intake in adults.” *The American Journal of Clinical Nutrition*. 2026;123(6):101315. https://doi.org/10.1016/j.ajcnut.2026.101315
- Arch JJ, et al. “Enjoying food without caloric cost: The impact of brief mindfulness on laboratory eating outcomes.” *Behaviour Research and Therapy*. 2016;79:23–34. https://doi.org/10.1016/j.brat.2016.02.002


※本記事は一般的な健康情報を目的としたもので、個別の診断や治療に代わるものではありません。

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